【第365回】WEB集客最前線(コスト高時代に問われるリピーター戦略) 2025/12/10|コラム

【第365回】週刊観光経済新聞掲載の、弊社取締役本部長 小林義道によるWEBマーケティング インターネット徹底集客の記事のご紹介です。
今回のテーマは、WEB集客最前線(コスト高時代に問われるリピーター戦略)について。

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【第365回】WEB集客最前線(コスト高時代に問われるリピーター戦略)

マーケティング「1:5の法則」

マーケティングには「1:5の法則」がある。
新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの5倍かかるというものだ。宿泊業界では、広告費やOTA手数料の増大により、この差はさらに広がっている。
新規流入に頼る経営は、獲得コストの上昇とともに利益率を消耗し続ける構造であり、再訪客の増加こそが最も費用対効果の高い戦略である。

OTA手数料の複雑化により、実質20%近くの負担

その収益圧迫の代表例が、OTA手数料の複雑化だ。
表面上は10〜15%であっても、ポイント負担、事前決済手数料、割引クーポン負担などが重なることで、実質20%近くの負担となるケースは珍しくない。
販売チャネルとして不可欠である一方、依存度が高まれば高まるほど利益が削られていく。こうした構造下では、「再訪=直接予約」への転換が収益改善の最短ルートとなる。

人材不足の影響

さらに深刻なのが、人材不足の影響だ。
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」では、宿泊業・飲食サービス業の離職率は一般労働者18.1%、パート29.9%と全産業平均を大幅に上回る。
地方では応募者の母数が減り、外国人スタッフに頼らざるを得ないが、夜勤や早朝シフトの偏在から離職が連鎖する例もみられる。現場に余裕がない環境では、リピーターを生むために必要な「ひと手間のケア」がどうしても削られてしまう。

リピーター創出に必要なこと

リピーター増加の鍵は、本質的にはシンプルだ。財団法人日本交通公社の調査では、旅館のほうがリピーター率は低いものの、小規模宿ほど“顔が見える接客”により再訪につながりやすい。また、直接予約比率の高い施設ほどロイヤル顧客が育ちやすく、結果としてリピーター率も高い傾向が示されている。
つまり、リピーター創出に必要なのは「顧客がまた来たいと思う理由」を積み重ねる余白と、その価値を伝える導線である。スタッフの負担を軽減するデジタル化、直接予約を促す導線設計、記憶に残る接客の“ひと手間”。この三つを揃えることが、最も確実で持続的なリピート戦略となる。

リピーター戦略とは単なる販促施策ではなく、利益構造と現場運営を同時に改善する「経営の生命線」である。
手数料に頼らず、人に無理をさせず、顧客の心を丁寧に積み上げる。この循環を作れた宿ほど、強く、長く生き残ることができる。

(株式会社プライムコンセプト 小林義道)

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